電力供給の要となる「バスバー(ブスバー)」。大電流を効率よく流し、省スペース化を実現するための導電部品として、配電盤や制御盤、そして近年のEV(電気自動車)開発において欠かせない存在です。
しかし、バスバーの設計には、ケーブル配線とは異なる「熱設計(許容電流)」「絶縁距離の確保」「複雑な曲げ加工」といった専門的な知識が求められます。特に試作段階では、「標準品では形状が合わない」「設計変更への対応が間に合わない」といった課題に直面することも多いのではないでしょうか。
本記事では、精密板金の専門メーカーであるツツミ産業が、バスバーの基礎知識から、銅材(C1100/C1020)の選び方、設計者が悩む絶縁対策までを徹底解説します。また、開発リードタイムを短縮するための「難加工・短納期試作」についてもご紹介します。
バスバー(ブスバー)とは
バスバー(Busbar)とは、電気を供給元から各機器へ分配あるいは合流させるための、棒状または板状の導体のことです。 日本語では「母線(ぼせん)」とも呼ばれますが、現場では英語読みの「バスバー」や「ブスバー」、あるいは素材名で「銅バー」と呼ばれることが一般的です。
その役割は、いわば「電気の高速道路」です。細いケーブルを何本も束ねる代わりに、断面積の大きな金属の延べ板を使用することで、大電流をロスなく、安全に目的地まで運びます。


電力損失を抑え、大電流を流せる。
バスバーの特徴(メリット)
なぜ、ケーブルではなくバスバーが選ばれるのでしょうか? 主なメリットは以下の3点です。
大電流への対応力
ケーブル(電線)で大電流を流そうとすると、導体が太くなりすぎたり、複数本を並列接続する必要が出てきたりします。バスバーは断面積を大きく確保できるため、数百〜数千アンペアの大電流でも容易に対応可能です。
高い放熱性
バスバーは板状であるため、ケーブルに比べて表面積が広く、空気に触れる面積が大きくなります。これにより放熱効果が高まり、温度上昇を抑えることができます。
省スペースと整然としたレイアウト
配電盤やバッテリーユニット内において、ケーブル配線は「たるみ」や「曲げ」のスペースが必要です。一方、バスバーは直角に曲げたり、筐体の壁面に沿わせたりと、3次元的な設計が可能です。これにより、内部スペースを有効活用でき、誤配線のリスクも低減します。また、インピーダンス(交流抵抗)を低く抑えられる利点もあります。


サイズ:80×70×40 (t=0.8)
自由度の高い設計が可能。


サイズ:23×20×20 (t=2)
曲げ加工で省スペース化。
バスバーの種類
バスバーには用途や設置場所に応じて、いくつかの種類があります。
- リジッドバスバー(単層・裸バー):
最も一般的な、硬い板状のバスバーです。銅やアルミの板材を切断・穴あけ・曲げ加工して製作します。 - ラミネートバスバー:
薄い導体と絶縁層を交互に重ね合わせたもの。インダクタンスを極限まで低減できるため、パワー半導体(IGBTなど)の接続によく使われます。 - フレキシブルバスバー:
薄い銅箔を積層し、両端を溶着したもの。柔軟性があり、振動吸収や公差の吸収が必要な箇所に使われます。
当社では、これらの中でも特に「リジッドバスバーの複雑な曲げ加工」や「特殊形状のオーダーメイド」を得意としています。
バスバーの材料 – 材料比較(導電率)と無酸素銅の使い分け
バスバーの性能を決定づける最も重要な要素が「材料選定」です。
要求される許容電流、設置スペース、そして重量制限によって、選定される金属は異なります。ここでは、代表的な導電材料である「銅」「アルミ」「真鍮」の比較と、精密板金加工において特に重要となる「銅の種類(C1100とC1020)」の違いについて解説します。
銅・アルミ・真鍮の特性比較
バスバー材料として主に検討される3種の金属について、導電率(%IACS)、比重、コスト、加工性の観点から比較しました。
| 項目 | 銅 (C1100/C1020) | アルミニウム (A1050等) | 真鍮 (C2801等) |
| 導電率 (%IACS)※ | 100% (極めて高い) | 約60% (銅の約6割) | 約28% (低い) |
| 熱伝導率 (W/m·K) | 398(高い) | 236 | 106(低い) |
| 比重 (g/cm³) | 8.89 (重い) | 2.70 (軽い) | 8.43 (重い) |
| 強度・加工性 | 曲げ・展延性に優れる | 柔らかいが強度は低い | 硬く、切削性は良いが曲げに弱い |
| コスト | 高い | 安い | 普通 |
| 主な用途 | 大電流バスバー、配電盤、基板 | EV用バスバー、軽量化部品 | 端子台、ネジ、装飾部品 |
※導電率は、20℃基準の代表値


銅・アルミ・真鍮


銅・アルミ・真鍮
各材料の選定ポイント
- 銅 (Copper):
圧倒的な導電率により、「省スペースで大電流を流す」には銅一択です。アルミよりも断面積を小さくできるため、コンパクトな設計に適しています。 - アルミニウム (Aluminum):
導電率は銅の60%程度ですが、比重は約3分の1と非常に軽いため、「スペースに余裕があり、軽量化が最優先される場合(EVなど)」に採用されます。 - 真鍮 (Brass):
強度はありますが導電率は低く、メインのバスバーとして使われることは稀です。加工(切削)しやすいため、接続端子やボルト等の部品に使われます。
【設計者必見】タフピッチ銅(C1100)と無酸素銅(C1020)の違い
「銅バスバー」と一口に言っても、JIS規格には主にタフピッチ銅(C1100)と無酸素銅(C1020)の2種類が存在します。 両者の導電率はほぼ同等ですが、「熱を加える加工(溶接・ろう付け)」を行うかどうかで、選定を誤ると重大な欠陥につながる可能性があります。
水素脆化のリスク
タフピッチ銅(C1100)には、微量の酸素が含まれています。これを還元雰囲気中(水素が含まれる環境など)で600℃以上に加熱すると、銅内部の酸素と水素が反応して水蒸気(H₂O)が発生し、内部から亀裂が生じます。これを「水素脆化」と呼びます。
このため、溶接やろう付け、高温環境での使用が想定されるバスバーには、酸素を含まない「無酸素銅(C1020)」を使用する必要があります。
| 銅の種類 | 特徴 | 向いている加工・用途 | 注意点 |
| タフピッチ銅 (C1100) | 一般的で入手性が良い。導電性は高い。 | 曲げ加工、穴あけ、ボルト締結のみのバスバー。 | 600℃以上の加熱厳禁。 溶接・ろう付け不可(脆化する)。 |
| 無酸素銅 (C1020) | 酸素含有量が極めて少ない。展延性・絞り加工性に優れる。 | 溶接、ろう付け、深絞り加工。 真空機器や高温環境用。 | C1100より若干コストが上がる場合がある。 |
当社では、単純な曲げ加工であればコストメリットのあるC1100を、複雑な形状で溶接が必要な場合や、より高度な信頼性が求められる場合にはC1020をご提案するなど、加工内容と使用環境に合わせた最適な材料選定をサポートいたします。
省スペースを実現する「曲げ加工」と「許容電流」の関係
バスバー設計において最も頭を悩ませるのが、「限られたスペースにいかに太い導体を通すか」という問題です。
許容電流と断面積
許容電流は、単に断面積だけで決まるものではありません。「放熱条件」が大きく関わります。
例えば、同じ断面積でも「厚く狭い」形状より「薄く広い」形状の方が、表面積が大きくなり放熱効率が上がるため、より多くの電流を流せます。
最小曲げ半径と難加工
省スペース化のために「直角に曲げたい」「クランク状に曲げたい」という要望は多くあります。しかし、銅板には「最小曲げ半径(R)」があり、板厚に対してRが小さすぎると、外側にクラック(割れ)が発生します。
ツツミ産業は精密板金で培った曲げや金型技術により、クラックの発生を抑えつつ、限界に近い小さなRでの曲げ加工を実現します。また、通常のプレス機では難しい「エッジワイズ曲げ」や「3次元的なひねり(ツイスト加工)」、「複合的な曲げ」も、専用治具と職人の技で対応可能です。他社で断られた複雑な形状も、ぜひ一度ご相談ください。


330×80×15 (t=5)
材料の無駄を省くエッジワイズ曲げ。


520×140×30 (t=5)
ツイスト加工(Wスパイラル曲げ)。
絶縁対策と表面処理
EVバッテリー周辺や高電圧盤内では、導電性だけでなく「絶縁性」の確保が不可欠です。当社では、加工から絶縁処理までを一貫して対応可能です。
- 熱収縮チューブ:
最も一般的な絶縁方法です。直線部分は安価に対応できますが、複雑な曲げ形状や分岐がある場合、シワができたり密着しなかったりするリスクがあります。 - エポキシ粉体塗装(絶縁コーティング):
静電気を利用して粉末塗料を付着させ焼き付けるため、複雑な3次元形状であっても均一な膜厚でコーティング可能です。耐電圧性能が高く、剥がれにくいのが特徴です。 - メッキ処理(スズ、ニッケル、銀):
接触部の酸化防止や、接触抵抗の低減(導電性の確保)のために行います。
開発スピードを加速させる「短納期試作」の重要性
開発現場において、「設計変更による手戻り」は避けられないものです。 「形状が少し変わっただけで、金型の修正に2週間かかる」 「試作の見積もりに数日待たされる」 これでは、激化する開発競争に勝てません。
ツツミ産業は「試作特化の板金メーカー」として、以下の強みを持っています。
- 金型レス・簡易金型:
レーザー加工機やタレットパンチプレスを駆使し、本金型を作らずにイニシャルコストを抑えて素早く製作します。 - 即応体制:
図面はもちろん、ラフスケッチ段階からのご相談も可能です。「とりあえず1個ほしい」というご要望に、最短納期でお応えします。即日にバスバー納品の実績あり。 - VA/VE提案:
図面通りに作るだけでなく、「ここを溶接から曲げに変えればコストが下がる」「材料取りを工夫すれば歩留まりが良くなる」といった、加工のプロ視点での提案を行います。


高難度・短納期のバスバー試作ならお任せください
バスバーの設計・調達は、単に「銅の板を買う」ことではありません。 適切な材料選定(C1020/C1100)、熱とスペースを考慮した形状設計、そして安全性を担保する絶縁処理。これらが組み合わさって初めて、高性能なバスバーが完成します。
一般的な規格品や単純形状であれば、通販サイトを利用するのが便利でしょう。 しかし、「熱対策で特殊な形状が必要」「溶接構造で強度を出したい」「開発納期が迫っている」という場合は、精密板金のプロフェッショナルである私たちにご相談ください。
設計・開発技術者の皆様の「困った」を、確かな板金技術で解決いたします。お見積もりや技術相談は、下記フォームよりお気軽にお問い合わせください。

