精密板金の「曲げ加工」を徹底解説!設計者が知っておくべき基礎知識とコストダウンのポイント

曲げ加工のアイキャッチ画像。

精密板金の「曲げ加工」は、筐体やブラケットなど製品の最終的な形状や強度を決定づける非常に重要な工程です。しかし、設計段階で金属の特性(スプリングバックや最小曲げ半径など)を十分に考慮していないと、製造現場での加工不良や、専用金型の製作による想定外のコストアップを招く原因となります。

本記事では、メーカーの開発・設計担当者様に向けて、精密板金における曲げ加工の基本的な種類から、図面作成時に注意すべきポイント、さらにはVA/VE(コストダウン)に繋がる設計のコツまでを分かりやすく解説します。設計品質の向上と、スムーズな調達の参考にぜひお役立てください。

目次

精密板金の「曲げ加工」とは?

曲げ加工の仕組みと主要な設備(プレスブレーキ/ベンダー)

精密板金における「曲げ加工」とは、平らな金属板(ブランク材)に圧力を加え、任意の角度や形状に塑性変形させる加工技術です。主に「プレスブレーキ(ベンダー)」と呼ばれる機械を使用します。
プレスブレーキは、上側の金型(パンチ)と下側の金型(ダイ)の間に金属板を挟み込み、上から圧力をかけることで金属を曲げます。NC(数値制御)装置を搭載した最新のベンダーでは、曲げ角度やバックゲージ(突き当て)の位置をミリ単位・角度単位で精密に制御することが可能です。

プレスブレーキ/ベンダーの作業風景。

精密板金と一般的な製缶板金における曲げ加工の違い

同じ「曲げ加工」でも、精密板金と製缶板金では求められる精度と扱う板厚が異なります。
製缶板金が鉄骨や厚板(数mm〜十数mm以上)を用いた大型構造物を対象とし、溶接を主体とするのに対し、精密板金は主に薄板(0.1mm〜3.0mm程度)を扱います。通信機器の筐体や医療機器のブラケットなど、公差が±0.1mm〜±0.2mmといった非常にシビアな寸法精度が求められるのが精密板金における曲げ加工の特徴です。

代表的な曲げ加工の種類と特徴

V曲げ(最もオーソドックスな曲げ加工)

V字型のダイ(下型)に金属板を置き、V字型のパンチ(上型)で押し込む、板金加工において最も多用される手法です。90度曲げ(直角曲げ)をはじめ、鋭角から鈍角まで幅広い角度に対応できます。汎用金型で対応できるため、初期コストを抑えやすいのがメリットです。

V曲げのデフォルメ画像。

U曲げ/コ字曲げ

U字型、あるいはコの字型に金属を曲げる加工です。専用の金型を用いて一度のストロークで両側を同時に曲げる方法と、V曲げを2回繰り返してコの字にする方法があります。筐体のカバーやチャンネル(溝形)部品の製作によく用いられます。

U曲げのデフォルメ画像。

Z曲げ(段曲げ)

階段状に2箇所の曲げを行う加工で、「段曲げ」とも呼ばれます。部品同士の段差合わせや、強度(剛性)を持たせるためのリブ代わりとして設計されることが多い形状です。段差が極端に小さい場合は、専用の段曲げ金型を使用することもあります。

Z曲げのデフォルメ画像。

ヘミング曲げ(あざ折り・折り返し・縁曲げ)

板の端部を180度完全に折り返す加工です。鋭利なエッジ(端面)を隠すことで作業者の安全性を確保するほか、板厚を擬似的に2倍にすることで部品の剛性を大幅に向上させる効果があります

ヘミング曲げのデフォルメ画像。

R曲げ(ロール曲げ)

直角ではなく、大きなカーブ(R形状)を持たせる曲げ加工です。3本ローラーなどの専用設備を通すことで円筒や円弧形状を作ります。Rのサイズが大きい場合は金型を使わず、少しずつ位置をずらしながら複数回V曲げを行う「送り曲げ(ステップベンド)」でR形状を近似的に作り出す手法も取られます。

R曲げのデフォルメ画像。

【設計者必見】曲げ加工の図面作成における4つの注意点

① スプリングバック(跳ね返り)の予測と対策

金属には、圧力を解放した際に元の真っ直ぐな状態に戻ろうとする性質「スプリングバック」があります。材質(ステンレスは鉄より大きいなど)や板厚によって戻る角度が異なるため、現場では目標角度よりも少し鋭角に曲げ(オーバーストローク)、スプリングバックを見越した加工を行います。設計段階では、材質の特性を理解し、極端にスプリングバックが起きやすい無理な形状を避けることが重要です。

② 材質・板厚ごとの「最小曲げ半径(限界曲げ半径)」を守る

曲げ加工の内側には圧縮応力が、外側には引張応力が働きます。曲げ半径(R)が小さすぎると、外側の金属組織が耐えきれずにクラック(割れ)が発生します。これを防ぐために、材質や板厚ごとに定められた「最小曲げ半径」を遵守して図面を描くことが必須です。一般的に、硬い材質や厚い板ほど大きな曲げ半径が必要になります。

③ 曲げ線付近の穴変形(穴の近接)を防ぐ設計寸法

曲げ線のすぐ近くにネジ穴やスリットがあると、曲げ加工時の応力に引っ張られて穴が楕円状に変形してしまいます。これを防ぐためには、穴の端から曲げの中心線までの距離を「板厚の数倍以上」離す設計にする必要があります。どうしても近くに穴が必要な場合は、加工後にドリルで穴を空けるなどの後工程が必要となり、コストアップの要因となります。

④ 展開寸法の計算(伸び値・曲げ控除)の基本ルール

金属を曲げると、外側は伸び、内側は縮むため、展開図(曲げる前の平らな状態)の寸法は、完成品の寸法を単純に足し合わせたものとは異なります。正確な製品を作るためには、材質や板厚、曲げ角度に応じた「伸び値(曲げ控除)」を計算し、展開寸法を算出する必要があります。CADソフトの板金機能を利用する際も、このKファクター(中立軸の位置)の設定が正確であることが求められます。

曲げ加工を活用したコストダウン(VA/VE)のポイント

溶接構造を「曲げ加工(一体化)」に変更し、部品点数と工数を削減

複数の部品を溶接して組み立てている構造を、一枚の板からの「曲げ加工」による一体成形に見直すことで、大幅なコストダウン(VA/VE)が可能です。部品点数の削減による管理コストの低下に加え、溶接工数、仕上げ工程(焼け取りなど)を省略できるため、リードタイムの短縮にも直結します。

標準金型(汎用金型)で加工できる寸法・形状に設計する

特殊な角度や極端に狭いU曲げなどを設計すると、加工のために特注の金型(専用型)を製作する必要が生じ、初期費用が跳ね上がります。板金工場の多くが保有している標準的な金型(V溝幅やパンチ先端R)で加工可能な寸法・形状で設計することで、金型費をゼロに抑え、スムーズな調達が可能になります。

逃がし(スリット)を設けて割れや歪みを防ぐ

フランジ(曲げの一部)の幅が途中で変わる形状や、板の途中から曲げるような形状の場合、曲げの根本に応力が集中して割れや歪みが生じます。これを防ぐために、あらかじめ曲げ線の両端に「曲げ逃がし(スリットや丸穴)」を設ける設計が有効です。これにより加工不良が減り、結果的に歩留まり向上とコストダウンに繋がります。

複雑な曲げ加工・高精度な精密板金はツツミ産業にお任せください

職人の技術と最新鋭のベンダーによる高精度な曲げ加工

当社では、長年培ってきた職人の高度な技術と、最新鋭のNCプレスブレーキを駆使し、厳しい公差が求められる精密板金の曲げ加工に対応しています。多彩な曲げ、そして多種多様な材料の加工実績があります。ステンレス、アルミ、鉄はもちろん、加工が難しい特殊材の曲げ加工についてもお気軽にご相談ください。

無酸素銅製のバスバー(ブスバー)
Z曲げ。銅バスバー製品。
円筒銅溶接製品
R曲げ。熱交換器部品。
無酸素銅製のバスバー(ブスバー)
ヘミング曲げ。銅バスバー。
ヘミング曲げ。ヒートシンク。

開発初期段階からのVA/VE提案にも対応

「図面通りに作る」だけでなく、開発・設計の初期段階からお声がけいただくことで、「ここを曲げ構造にすれば溶接を減らせます」「標準金型で加工できるよう、ここの寸法を数ミリ変更できませんか?」といった、プロの目線からのVA/VE(コストダウン・品質向上)提案を得意としております。

試作1点から中量産まで柔軟に対応いたします。加工可否の判断や、コストダウンのご相談、お見積りのご依頼は、お問い合わせフォームまたはお電話にて随時承っております。図面データ(2D/3D)を添付いただければ、よりスムーズな回答が可能です。まずはお気軽にご連絡ください。

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